2017/08/17

ひねもすのたりのたりかな


夏休み中盤戦、ここにきて東京が寒い。晩秋を思わせる冷たい空気に身体が冷える。靴下を脱いだ瞬間足が攣り、風呂上りには寒気がし、うたた寝しようものなら寝違える。過疎の村の役場のすぐやる課を思わせるコール&レスポンス。BBAの身体と冷えの親和性のすさまじさよ。ぎぎぎ。でもいい、私のことはいい、でも我が家の冷蔵庫にはヤマダ電機の抽選でもらった「冷やし中華食べ比べセット」という賞味期限短めの大量の生麺がスタンバイしているので、もうちょっとこう、夏は空気読んで欲しいというか、30℃くらい目指して欲しい。もしくは私が外出しなくていい日に34℃くらいどうだろうか。

牛乳石鹸のPRで世(ツイッターランド)が荒れている。観てないから何とも言えないけれど自分が使っているわけでもない商品のPRは別にどうでもよくて、ちゃんと反応して正しい方向に導こうとする人々の優しさとおかしい許せないと息巻く人々の滑稽さに、目を細める。だって牛乳石鹸だよ。商品や会社を馬鹿にしているわけではなく、これは単なる区別。嫌なら使わないという選択ができる商品。どうでもよかろうて。でもまあ、他人様にああしろこうしろと思うわけではなく、なんとなく、自分は極力、事を荒立てず心に波風を立てず平和に生きようと思うにいたる。


「犯罪者 クリミナル」太田愛 2012 角川書店

白昼の駅前広場で4人が刺殺される通り魔事件が発生。犯人は逮捕されたが、ただひとり助かった青年・修司は搬送先の病院で奇妙な男から「逃げろ。あと10日生き延びれば助かる」と警告される。その直後、謎の暗殺者に襲撃される修司。なぜ自分は10日以内に殺されなければならないのか。はみだし刑事・相馬によって命を救われた修司は、相馬の友人で博覧強記の男・鑓水と3人で、暗殺者に追われながら事件の真相を追う。 

著者の新作「天上の葦」に興味があり、シリーズものだと聞いたのでおさらいのつもりで初刊を手に。巨悪に挑む男達がそれぞれに人間的魅力と正義感を持ち、日頃は泥水の中を這いまわるような作品ばかりを手にしている私からすると少々嘘っぽく思えてしまいもするけれど、正しく在ろうともがき突き進む真っすぐな人々のドラマ的な活躍はやっぱり読んでいて爽快。主要人物も刑事と探偵と助手という抜かりなさ(何が?かは聞かないお約束)。そしてラストも未来に希望を残す読後感の良さ。多分このシリーズはいつの日か映像化されると思う。

チカチーロ似、というと否定してくれる人もいるけど、多分その人が想像するのは檻の中で不気味に笑う禿頭の彼ではないかと。私は若いころのチカチーロ似。で、事件については既にかなり詳しいけれどなんとなく読んでおくべきかと手に取った「子ども達は森へ消えた」はその内容からなかなか進まず。ロシア人の名前、覚えられない。

2017/08/14

台湾雑記②

普段は割と厳しく育てているので旅行中などハレの日ついつい娘を甘やかしてしまう。そのため食事における彼女の好物である小籠包率の高さがえぐいことに。滞在中は娘の希望で観光客ガイドブックでお馴染みの「鼎泰豐」「金品茶樓」「京鼎樓」に赴き食べ比べ。味にわりと無頓着な私だからこそ言えることだと思うのだけど、まあどこも大体メニューも味も同じだった。ので、店内の清潔感と従業員の立ち振る舞いの素晴らしさを鑑みて「鼎泰豐」に行っておけば間違いないなと。中山駅近隣の新光三越店だとピーク時間を外していけばさほど並ぶことなく入店できるのでおすすめ。

どちらも普段から行けるところにあるというのに、結局「鼎泰豐」と「春水堂」が良いという結論に達するつまらない我らナカヤズ。

知人の紹介で行天宮駅にある占い横丁のK先生のもとへ。私は占いが苦手などで夫の付き添い。K先生は日本語も非常に堪能かつ陽気な初老の紳士で、最後に渡してくれる紙に運勢などいろいろと書き記しながらてきぱきと占ってくれるので、占い=胡散臭いという私の先入観は早々に晴れていった。それにしても名前と生年月日と手相だけでどうしてあそこまで言い当てられるのだろうか不思議で仕方がない。指摘に対して大きく頷く私たちに、そうでしょうそうでしょうと非常に嬉しそうに微笑まれるので、その後のアドバイスが身に染みる。良いことをたくさん言ってくださり夫はとても満足したようだし、私もなんかいろいろ褒められたので、帰る頃にはもうすっかりファンだ。自分が占ってもらう気にはやはりなかなかなれないけれど、気持ちよく帰らせてくれる、未来に前向きにさせてもらえる、そういったヒーリング効果という側面が占いにはあるのだと目から鱗。それにしても「アイス食べ過ぎほんと駄目だから」と何度も言われる39歳/会社員/男性の姿は滑稽であった。

行天宮をお参りしてからマンゴーかき氷のために徒歩10分ほどの「黒岩黒砂糖剉冰」へ移動。わかりにくい場所にあるのでグーグルマップが非常に役立った、というか無かったら多分途中の市場の隅っこで干からびて死んでいたと思う。それほどに台湾は蒸し暑い。那覇の熱気が苦手で沖縄を候補地から外したのに一体我々は何をしているんだろうか。這う這うの体で辿りつた店でいただいたかき氷は沖縄の黒糖を溶いて作った氷を削ってつくっていて仄かなほろ苦さと香ばしさがマンゴーのねっとりとした甘みと食感を引き立てていて非常に美味だった。そして120TWDという安さに驚いた。

毎日狂ったようにホテルのプールで泳いでいたのだけど、毎回、サングラスとブーメランパンツで日光浴するコトゥーゲ的な人がいて目が離せなかった。いつも中国版日刊スポーツ的なグラビア率高そうな紙面をものすごうく嬉しそうな顔で眺めていて、最初はむきたてゆでたまごだったのが最終日には燻製たまごくらいに変色していたので、なんかこう諸行無常。

2017/08/09

台湾雑記①

羽田空港の駐車場に車を預けてからANAで台北松山空港へ。
宿泊はリージェント台北のバルコニープレミアルーム。その名の通りバルコニーはあるけれど景観が良いわけではない。私はスーツケースから荷物を全部取り出して洋服はハンガーに掛けてしまいたいタイプなので広いクローゼットはとてもありがたかった。水回りも清潔。ラウンジも使えて便利。プールもあって感激(娘が)。ホテルに到着するなりプール。朝起きるなりプール。水棲生物かのように水を求める娘を甘やかした結果、4日間の滞在で計6回もプールに行くことになるという悲劇。


台湾といえば夜市、と喧伝されていて、その雑多な雰囲気や活気に興味があったのでホテル近くの夜市について調べたりもしていたけれど、私も夫も屋台のものが食べられないので結局は行かずに終わってしまった。なので台湾名物にして定番といわれる魯肉飯もホテルの近くジェイソンズスーパーマーケットのフードコートで一度食べたきり。店名は失念。魯肉飯と雲吞スープと小鉢のセットで100TWD(約380円)だった。とても美味しかったので次回の滞在ではいろいろな店で食べ比べてみたい。



食にそれほど興味がないというか何食べても美味しいので平素はリアクション極薄だが大好物の北京ダックを前に満面の笑み、という写真が残っているのだけれど、どっからどう見ても生き別れの兄ことアンガールズ山根くんなのでやっぱり今後もリアクション押さえていこうと誓う。旅行前から北京ダックをいただくつもりでリージェント台北の晶華軒と天厨菜館を比較し、半身で注文できるということで晶華軒に予約を入れていたのだ。北京ダックをなんかこうネギと巻いたやつ(語彙力!)が食べきれないほど皿に盛られて、なおかつ別皿にまだ残った皮と身が。幸せいっぱい胸いっぱい。でも身の部分は当たり前だけどものすごくアヒル感溢れる味で口の中で噛んだ瞬間に脳裏にひろがる沼地の風景。残して悪かったと思うし今までもこれからも皮だけ食べていこうと強く思った。右の画像は夫が注文した薬膳的なスープ。店員さんは「ノースパイシー」と話していたがベリースパイシーだった。

2017/08/07

habitant du sud


夏休みだというのに「夏休み子どもアニメ劇場」も「あなたの知らない世界」も「ルックルック 女ののど自慢」も観られないだなんて最近の子は可哀想だな、このコンボで人はこの世の無常を学ぶんだよ、と一瞬だけ思ったけど、可哀想なのはおまえらの方だろとすぐさま思い直す。とりあえず、早く夏休みが終わり、学校に行くことを、強く、祈る。

今年の夏の旅行は台北4日間。マイプレシャス金城武の画像に反してANAだったけど。「すこしの事にも、先達はあらまほしきことなり」という仁和寺の和尚マインドで周囲に聞いて回ったところ、皆口をそろえて言うことは「夏に行くのはおすすめしない」「ヌガーの試食で歯の詰め物が取れた」「とりあえず鼎泰豊に行っておけば間違いない」ということ。へーそうなんだーうんわかったー、と棒読みあるのみ。本屋でガイドブックがたくさん売られている理由が本当によくわかった。でも、帰ってきた今まさにナウ、玉川高島屋でしょっちゅう行ったことがあるにもかかわらず私も「とりあえず鼎泰豊に行っておけば間違いない」とは今後どんどん発信していくだろうと確信している。屋台や路面で食事するのが得意ではない家族なので台湾の食の魅力を充分に理解できたとは思わないのだけど、高温多湿で中国語飛び交う空間に漂う日本人への優しい気配などに嬉しくなったりもして、そのうち旅行記みたいなものを残しておこうかと思うのだけど、本当に思っているだけで終わりそうだ。あと、どうでもいいけど、娘にせがまれて4日間で6回もプールに入ったので「自分で自分のことをほめたいとおもいます」という世界陸上バイブス。

2017/07/18

春すぎて夏来にけらし


毎日あまりにも暑くて生きる気力を無くしつつある。夏とは、暑さとは、外出する際にこれほどに覚悟を要するものだったろうか。マッスルエリートがたむろする御近所の日体大すらグランドで活動しないレベル。素人には手が負えない事態だ、なのに未だに炎天下で体育の授業をしているのを見掛けて驚いてしまう。校舎はクーラーが効いているから大丈夫なのかもしれないけれど、もう日本の夏は外で運動できるものではなくなっていると思うのだけどな。それにしてもクーラー羨ましいぞ。小中高とクーラーのない学校で学んだことが今となっては恐ろしく思えるし、だから頭もこの程度なのかと腑に落ちたりもするけれど。関係ない話だけれど、冬は教室にストーブが置かれていて、夏よりは配慮されていたのだけれど、ストーブ周りで談笑を楽しみつつ暖を取れるのはクラスのイケている人たちだけで、スクールカーストで言うところのフローターな私はロッカーの上に座って寒さに震えていたよ。

2017/06/29

集真藍




娘の学校関係の友人と食事。基本的にヤフーニュースが情報源な我らのテーブルは松居一代さんの話題で持ちきりだった。やばい!こわい!とかいう他人事な論点でなく、私たちもうっかり更年期を拗らせたら見えない敵と戦い始めるかもしれないし、隣人にさっさと引越せ的なフリーラップバトルを挑みだすかもしれないし、居もしない小動物の為に床板をはがしたりするかもしれない、そうなったらお互いに注意し合おうね、病院に付き添い合おうね、という切実な目線。長年生きていると、自分だけは大丈夫なんていう根拠ない自信なんてもう擦り切れてなくなっているわけで。自然とホルモンには逆らえないのだ。その話題のあとは案の定みんな小林麻央さんのことでしんみり。お店の各テーブルもしんみり。 

最近は粗食を心掛けて、予定のない日は私のみ玄米で一汁一菜。健康に良いか、美容に良いか、などはまだわからないけれど確実に言えることがひとつだけある。それは白米の異常なまでの美味しさ。芳醇で贅沢な味はもはやスィーツだ。噛みしめると「ありがたや」という言葉しか頭に浮かばないのは私の前世が水のみ百姓(推定)だからという理由だけではないはずだ。というか水のみ百姓なのか。大昔に友達と前世占いに行ったことがあるけれど、みんながいろいろと前世のあれこれを言いわたされるなか、私だけが占い師に「もっとホウレン草やにんじんを食べなさい」と言われたことを思い出す。当時はシャイで言えなかったけれど、今なら言える。占い料金を返して欲しい。



ベン・マッキンタイアー「キム・フィルビー かくも親密な裏切り」(中央公論新社, 2015)

冷戦下の世界を震撼させた英国史上最も悪名高い二重スパイ。そのソ連亡命までの30年に及ぶ離れ業を、M16同僚との血まみれの友情を軸に描き出す。

「イギリス人の非常な礼儀正しさを示す、洗練された死闘だった」
キム・フィルビーの名前はル・カレ「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」のモデル(誰のかを書くとネタバレになってしまうので割愛)ということで聞いたのが初めてだった。本書は稀代の二重スパイであったキム・フィルビーと彼の魅力に惹かれ友情を育んだニコラス・エリオット、ともに英国の支配階層出身、との関係を軸に描かれている。フィルビーの皮肉な欺瞞に満ちたスパイ生活、そして「寒い国」への亡命という波乱万丈の人生を表すのに「事実は小説よりも奇なり」という言葉ほど当てはまるものはないように思う。

2017/06/27

melty


無職なのになぜこんなにも忙しいのだろうか、頭の中に疑問符が舞い続けるような数週間だった。すごく大胆かつカジュアルに小学校から集められていたというのもあるけれど、ドラマ「ハンニバル」をシーズン1から観直していたせいもあるけれど、溜まりに溜まっていた生業に関する読むべき本を読んでいたというのもあるけれど、春先から梅雨明けくらいに集約されているもろもろの手続きなんかがややこしくていかん。忙しい子とは別にいいけれど、こんなにも忙しいのに無職である、すなわち賃金がどこにも発生していないことに驚きを禁じ得ない。時給、それはなんて甘美な響き。日給、それはふれあいの言葉、幸せの青い雲。そういえば、唯一のバイト経験が巫女という特殊業務だったし、ずっと一応正社員だったから、時給貰ったことがない。このまま時給を貰わずに死んでいくのだろうか。時給に未練を残したせいで成仏できなかったらどうしよう。どうもしないですかそですかはい。













左:父と子のお買い物の間に休憩。
右:娘が作ってくれたブックマーク。絵も字も可愛い♡と思う親馬鹿具合。













左:躑躅と南天。緑碧の濃淡。 右:銀座まで行ったのに終わってた。

先日の話。吉野山の金峯山寺で行われる海老蔵の奉納舞踏観賞の案内が高島屋から届いていて、さぞや幽玄であろうと思いを馳せつつ、病身の奥様を置いて奈良に出るのは御心配だろうな役者は大変だななどと考えていた矢先の訃報。胸が痛い。遠い存在の方なのに心にぽっかりと穴が開いたような気持ちになる。偽りない優しさ明るさが伝わってくるような美しい笑顔の方だった。

病に負けずに強く生き抜いた方は、ご家族の手厚いケアの中で惜しまれて旅立って行かれた方でもあった。もし一人で孤独な戦いを強いられたら?と思うと、そして、今その最中にある方の苦痛を思うと、心に黒い雨雲が掛かったような陰鬱な気持ちになる。自分のことは置いておくとして、自分の手の届く範囲にいてくれる人達が今後もし病と闘うことになるとすれば、今の気持ちを忘れずにいて出来る限りのことさせてもらいたいと思う。あと、常々、夫より一日でも早く死にたいと思っていたのだけれど、夫に私を看取らせるなんて辛いことは可哀想で可哀想でさせられないから、逆に彼より一日でも長く生きようと思った。まあ、案外平気で独身気分を楽しみそうな可能性も否定はできないけど。