
娘の学校関係の友人と食事。基本的にヤフーニュースが情報源な我らのテーブルは松居一代さんの話題で持ちきりだった。やばい!こわい!とかいう他人事な論点でなく、私たちもうっかり更年期を拗らせたら見えない敵と戦い始めるかもしれないし、隣人にさっさと引越せ的なフリーラップバトルを挑みだすかもしれないし、居もしない小動物の為に床板をはがしたりするかもしれない、そうなったらお互いに注意し合おうね、病院に付き添い合おうね、という切実な目線。長年生きていると、自分だけは大丈夫なんていう根拠ない自信なんてもう擦り切れてなくなっているわけで。自然とホルモンには逆らえないのだ。その話題のあとは案の定みんな小林麻央さんのことでしんみり。お店の各テーブルもしんみり。
最近は粗食を心掛けて、予定のない日は私のみ玄米で一汁一菜。健康に良いか、美容に良いか、などはまだわからないけれど確実に言えることがひとつだけある。それは白米の異常なまでの美味しさ。芳醇で贅沢な味はもはやスィーツだ。噛みしめると「ありがたや」という言葉しか頭に浮かばないのは私の前世が水のみ百姓(推定)だからという理由だけではないはずだ。というか水のみ百姓なのか。大昔に友達と前世占いに行ったことがあるけれど、みんながいろいろと前世のあれこれを言いわたされるなか、私だけが占い師に「もっとホウレン草やにんじんを食べなさい」と言われたことを思い出す。当時はシャイで言えなかったけれど、今なら言える。占い料金を返して欲しい。
ベン・マッキンタイアー「キム・フィルビー かくも親密な裏切り」(中央公論新社, 2015)
冷戦下の世界を震撼させた英国史上最も悪名高い二重スパイ。そのソ連亡命までの30年に及ぶ離れ業を、M16同僚との血まみれの友情を軸に描き出す。
「イギリス人の非常な礼儀正しさを示す、洗練された死闘だった」
キム・フィルビーの名前はル・カレ「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」のモデル(誰のかを書くとネタバレになってしまうので割愛)ということで聞いたのが初めてだった。本書は稀代の二重スパイであったキム・フィルビーと彼の魅力に惹かれ友情を育んだニコラス・エリオット、ともに英国の支配階層出身、との関係を軸に描かれている。フィルビーの皮肉な欺瞞に満ちたスパイ生活、そして「寒い国」への亡命という波乱万丈の人生を表すのに「事実は小説よりも奇なり」という言葉ほど当てはまるものはないように思う。

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